Cocoon Bed 43

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 ナルトを引き倒したその腕の力は緩まない。カカシの胸へ抱き込まれるままその肌へ鼻を擦り付けた。
「……寝てる間に……先生、帰っちゃうかもって……」
 断片的に思い出した過去の場面がまた脳内を過ぎる。ナルトは声を詰まらせた。
 待って待って、やっとその姿を見られたと思ってもなかなか手が届かない、そういう人だった。今日はやっと願いが叶って一日中一緒にいられた。ずっとカカシの意識が自分だけに向いている瞬間が連続するのは、想像していた以上に嬉しく、同時にナルトはその間ずっと緊張を強いられた。心地良く張りつめた甘い胸の痛みは、強く弱く続いていて終わりがない。
「帰らないよ。今日も泊まるって言っただろ」
 ナルトは口を尖らせた。
「じゃあ起こしてくれたっていいじゃんか」
「お前の寝顔が可愛いすぎるのが悪いんでしょ」
「う、あ、あんまり可愛いとか言うなってばよ……」
 照れ臭い。しがみついて、足を足へ絡ませてみる。まだ今日という日を終わらせるつもりは毛頭ない。カカシは息を吐いて密着してくる細腰をぐいと抱き寄せた。そのまま寝間着の中へ手を入れ、広い掌で背中を撫でる。
「んん」
 ナルトはこらえもせず、きつくなった抱擁に喘いだ。それを間近に耳にしながら、さらに尾てい骨から太腿までを下着に沿って撫で回し、本当に忍耐なんて言葉には何の意味もないな、とカカシは考える。今日丸一日、ナルトが一途に差し出してくる思慕を受け取り続けた結果、この身体に少々早過ぎるなんてことは、大した問題ではないように思えてきた。
 何より昨夜、中途半端に触れ合いを切り上げて相当気まずい雰囲気になったことで、地味にダメージをくらっていた。あれを繰り返す気にはカカシは到底なれない。
 子供の時ほど、想いというものは真剣で純粋なものだ。ナルトの年頃の自分をちょっとでも振り返ってみれば、そんなほろ苦さはカカシの中にさえあちこちに転がっている。つまらない躓きで踏みにじられ、ないがしろにしてしまいがちな、素朴で大切な何か。
 それらが成長に必要な乗り越えるべきものと知っていても。
(もうそんな思いはしたくないって。できることなら、もう誰にもさせたくないって)
 何度も思ったはずだった。
(特に大事な相手ならば。この子には。例えそれが、甘やかすことになるような、……過ちかも、しれなくても)
 どうすればいい。もし望まれたらその願いを今度こそ叶えたいと思っている自分がいる。
 そんなカカシの内心を見透かしたようなタイミングだった。ナルトが口を開いたのは。
「せんせ、あのさ」
「うん」
「あのさ……き、昨日の……続き」
 聞こえるか聞こえないかぎりぎりだったが確実に二人の鼓膜を刺す小声。やはりこの相手の言動は常にカカシの一歩も二歩も先を行く。苦笑するしかない。
「……本当にしたいの? お前」
「した、い」
 何度もそう言ってるってばよ、と声を掠らせながらナルトは震えている。それは恥ずかしさからと言うより、また断られるのではないか、という恐怖によるものだとカカシは気付いた。
 そんなに怖がらなくていいよ、と言ってやりたかった。今夜はお前をがっかりさせるようなことにはならないから、と。だが、カカシがそれを言葉にするより、ナルトの方がまた一瞬上回って早かった。
「お願いカカシ先生。……父ちゃんと母ちゃんには、内緒にすっから……っ」
 まるで決死の覚悟のように切羽詰まった声音で。









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