Cocoon Bed 2

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 初めて告白した時のことを思い出す。
 あれはまだ、アカデミーに在学していた頃。まだ何も分かっていない子供だった。授業で習った変化の術が成功するようになって、自分でもびっくりするくらいかわいい女の子に化けられるようになって、ナルトはカカシに会いに行った。
 当時、カカシは正規軍ではなくミナトの直属で、里の裏向きの仕事を請け負う特殊な部隊に所属しており、とても忙しく、会うのは難しかった。ナルトはその僅かな機会を決して逃さずに、カカシを見掛けた時には、迷わず駆け寄っていた。
 カカシはナルトの気配に気付くと、必ずナルトを迎え、抱き上げてくれた。あの時は、たまたま周りに誰もいなかったのか、被っていた面をはずしてくれたのを、良く覚えている。
「せんせーみっけ!」
「ナールト、今日はずいぶんかわいいカッコしてるねぇ。変化、上手くなったじゃない」
「おう! すげーだろ!」
「うん、他のものに化けるよりずいぶんクオリティが高くて、オレはびっくりしてるよ」
 またカカシが上忍師になることなど正式に決めようもない時期だったにもかかわらず、どうやら父親の頭の中ではそういう予定になっているらしいと会話の端々から感じ取ったナルトは、勝手にカカシを先生と呼んでいて、カカシも別にそれを否定したりしなくて。
「これでオレ、先生の彼女になれるってばよ!」
「……へ……?」
「オレってば将来カカシ先生のお嫁さんになる!」
「……お前、それ本気で言ってるの?」
「オレはいつだってホンキだってばよ!」
「お前、オレのこと好きなの?」
「いっつもそう言ってんじゃねーか!」
「あ、うん、そうか。そうだったな。いや、でも……だからってお前、男の子でしょ。いくら女の子に化けられたって」
「カカシ先生はオレじゃイヤ?」
 思い切ったことを平然と聞いていたと思う。今はもう怖くて軽々しく聞けない。あの時のはっきりとしたカカシの答えと、その表情を、ナルトは未だに忘れることが出来なかった。
「イヤじゃないよ。オレもナルトのこと大好きだよ」
「ほんと? ホントにほんと?」
「ああ、ホントホント。でもねぇ、ナルトが大きくなったら、お前は普通に女の子のこと好きになるとオレは思うよ」
「なんねーよ! オレってばセンセーヒトスジだってばよ!」
「本当?」
「ほんとだってば!」
「ま、大きくなってもお前のその気持ちが変わらなかったら、考えてもいいかな」
(大きくなったらって、何歳のこと?)
(オレ、もう十三なのに。今年は、十四歳になっちまう)
 あの頃は良かった。何の疑いもなくいつか彼女にしてもらえるんだと思っていられた。だが、当たり前のようにしていたキスやハグは次第に機会が減り、今はまったくと言っていいほど無い。任務で本当に頑張った時に頭に手を置いてもらえるのがせいぜいだ。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。ナルトは、カカシの今の気持ちを確かめるのが怖い。あの時、ああは言ったけれど実はそれほど本気ではなかった、小さな子供に対するただの冗談だったのだと、そんな昔の約束なんて忘れてしまったと、言われてしまうのが怖かった。
 確かめずにいれば、いつかは相手をしてもらえるんじゃないかと希望を持っていられる。自分の気持ちを伝え続けることを止めずにすむ。
 しかし去年も、その前も。チョコレートを渡して精一杯の告白をしたところで何も進展はなかった。正直、このままではだめだと日々限界を感じているのも事実だ。
 もしかしたら、本当は迷惑なのかもしれない。ナルトのこの気持ちはカカシを困らせるものなのかもしれない。
 








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