Cocoon Bed 9

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「で、お前それ夕飯? 間食? まさかクシナさんがいない時、いつもこんなことしてるのか」
 カカシはジャンクフードが広げられたテーブルの上を見て、溜息を吐いた。
「……いっつもじゃねーもん」
 見られたくない現場を押さえられた気がする。このタイミングの悪さは笑えない。
「そう。ま、時々なら問題ないが。強い忍者になりたかったら、そういうのはオレ、勧めないぞー」
「知ってるし!」
 気まずさに拗ねてみせても、はいはい、と軽くあしらわれる。ナルトのころころとよく変わる表情を観察しながら、カカシは驚くべきことを切り出した。
「なぁナルト、今日、ここに泊まっていい?」
「へ?」
「向こうにオレの部屋着あるよね」
 びっくりして、ただ頷く。何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
「う、うん。いいけど、」
 なんで、いきなりそうなるのか。
 一体なぜ、急に泊まる気になったのか。そもそも何の用事で訪ねてきたのか、担当上忍になってから一度もしなかったことを、今日、どうして。
 疑問が一気に噴出するが、問いが口から出る前に、カカシはすたすたと歩いてナルトの部屋を横切っていく。
「風呂も借りるよー」
「お、おう」
 階段を下りて行くカカシを慌てて追うだけで精一杯だった。
「先生、腹減ってんの?」
「減ってる。メシ、ある?」
「ある! 用意してっから、早く入ってきちゃって」
「りょーかい」



 二人で食べるとなれば、迷っている暇はない。ナルトは大急ぎで冷蔵庫を開けた。大きなボウルに山盛りのサラダを皿へ取り分け、保存容器のおかずも盛り付ける。
 それほど手際良くはできない。鍋に入ったままの汁ものを温めたり、食糧庫から漬物を出すのは時間が掛かった。冷暗所の棚の、ラッピングまで完成して後は渡すばかりになったチョコレートが目に入ったが、今はそのことは考えないようにした。
 いつも母親が用意するような食卓に似せて整えていく。これで少しはイメージを挽回できるだろうか。
 ふと冷静になって、作り置きの料理がナルト一人には多過ぎる理由に思い当たった。何日家を空けるつもりか知らないが、もしかしてカカシが食べにくることを、いや、泊まりにくることを、クシナは知っていたのかもしれない。
 思い当たってしまうと、それ以外に理由はないように思えた。アカデミー時代とは違い、ナルトとサスケは現在、外部勢力に狙われる身の上だ。任務中や試験中に起こった事件で、身に滲みて感じている。
 いつも泰然としている父親や師匠がばたばたと慌しい動きを見せる時は、大抵それ絡みだということも。
 もしかしたら、カカシが護衛のために夜ここへ来ることは決まっていたのかもしれない。里の中でも、その一番深部の火影邸の中ですら、息子を単独で行動させるのは危なくなってきた、とミナトが判断したのなら、あり得る話だ。
 きゅう、と胃の奥が痛くなる。彼が来た理由に何か期待してしまう前に、気付いてよかったとナルトは思った。









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