Cocoon Bed 20

 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 TOP





 カカシの理性が飛ぶのは、思ったよりずっと早く、あっけなかった。
 初めての本格的な口付けにナルトは怯んだが、嫌がられはしなかった。長く深みのあるキスを終えると、どうしていいかわからないのだろう、まごついて睫毛を伏せる様子が間近に目に入り、堪らなくなった。
 気付けば、そのまま一方的に組み敷いていた。
 我ながら、やはりこのはたけカカシという男、これだから信用ならない、とつくづく思う。
 驚き慄く相手を宥めながら、薄い腹を触り倒した。せんせ、と訴える小声を耳に愉しみながら、浮き出た肋骨、背骨の一つ一つを辿り、冷静に分析している自分がいる。
(やっぱりまだ小さい。常識的に考えて)
 敷き伸べ、腕の中に閉じ込めて、撫で回して。されるがままどぎまぎしている未熟な骨格を、掌でじっくりと味わった。
 一年で身長は十センチ前後は伸びたはずだ。このペースの成長があと数年は続く。大事な時期。大事な身体……。木ノ葉の里の未来そのもののような、宝物のような、この身体。
(とてもじゃないが最後までなんて出来るわけがない。少なくともあと二、三年経たないと、無理だ)
(骨盤全体もまだこんなに小さい。骨と筋肉が完全に出来上がるまで、まだ何年もかかる)
 尻を撫でた。特に色っぽい丸みがあるわけでもないが、カカシの心を捕えて離さない魅力がこの小さく固い二つの肉の合間にある。手の平で割り入って、太腿の内側へと指をのばした。
「ゃあ……! や、やだ、せんせぇっ」
(……なんなの、その可愛過ぎる悲鳴。反則でしょ)
 震える喉を存分に唇で楽しみ、最後に白い項をざらりと舐め上げる。
 上体を起こし覗き込むと、青い瞳には厚い水膜が盛り上がっている。突然始められてしまった行為に怯えて、混乱しきって、震えて。
「泣いちゃったの、ナルト」
 ふ、と笑みが零れた。あまりの愛おしさに、どうしても頬が上がり目尻が下がってしまうのを自覚する。
「ごめん、驚かせたね。怖かったか?」
 ナルトはごくりと唾をのんだ。一息置いてから、気丈にも首を振る。
「こ、わく、なんか」
「……最初から無茶なことをさせるつもりはないから、安心しろ」
 もう一度、唇に唇を落としてやると、ナルトは極度の歓喜と緊張に背筋まで震わせた。まだ隙間に忍ばせた指は合い間へ刺し籠めたままだ。涙が浮かんでいる瞳を覗き込めば、光彩の深いブルーはたっぷりと水分に覆われて、きらきらと光を弾いている。
 綺麗だ。これほどまでに心奪われる光景が他にあるだろうか。なのに自分は、泣かせて鑑賞している、ただの悪い大人だ。
「ん」
 ナルトの両腕に力が籠る。健気な仕草だった。大人の手であらぬところを触られながらなのに、ナルトの指は再び果敢にカカシの肩を捉え、縋りつく。その力無い求めに応じて、カカシは再びその身に覆い被さった。
 こつん、と額を合わせる。
「カカシ先生……好き」
「……」
 切ない告白に胸が潰れそうに痛む。意思確認も何もなく突然始められて、きっと怖い思いをしているはずなのに、この子がその相手に向かってすることは、精一杯の思慕を差し出すことなのだ。
「ああ、ナルト。愛してる」
 絞り出すように答えた。ありったけの真摯な想いを込めて。だが、ありきたりのセリフしか出てこない。
「これからもずっと一緒にいる。うんと大事にするから、ね」
(一生掛けて大事にするから……許せ)









禁・無断複写複製転載転用 純愛無用