どういう「好き」なの? 1
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好きって気持ちには、いろんな種類があってさ。
お互い好意を持ってても、それが一致していないと、ちょっと辛いことになる。
オレは両想いになんて、なったことねぇけど。
初恋が実るのはとても幸運なことで、実らないのが普通なんだって悟ったり。
友情にも片想いがあるんだって思い知ったり。
そもそも、オレの初恋ってば、一体どれを指して言う言葉だったんだ? と、最近は考えたりもする。
三年前の自分を振り返ると、オレってば、周囲の人間や出会った人に対して、あんまりにも誰彼構わず体当たりだったと思う。
そういう人との付き合い方は、今でもあんま変わってねーかもしれねぇけど、あの頃は、とにかく必死だったんだってばよ。オレを見てくれる人が急激に増えて、自分がその人と一緒に居るっていうのが、実感できて。毎日が新鮮で、嬉しくて……。
一秒一秒が真剣勝負の連続だった。
そんなオレも、最近は少し余裕も出てきて、落ち着いて物を考えられるようになったと思う。それは里を離れて師匠と過ごした三年間のおかげだ。
決まった保護者を持ったり、誰か一人の大人を独り占めすることは、オレにはずっと許されなくて、エロ仙人はオレにとって初めてそうしていい相手だった。
修行はすっげー厳しくて、最初はリアルに千尋の谷に突き落とすようなこともされたし、旅の間も、オレにつきっきりかと思えば、執筆中は放置だったり、メチャクチャなことは多かった。でも、ずーっと二人きりだったから、オレはどんな時もおかまいなく真っ向勝負で接していられた。
総じて、師匠はとても面倒見の良い人だったのだと、今になってしみじみ実感してみたりする。
そして里に帰って来たオレは、自分が本当にそうしたかった相手は他にいた、ということをすぐに思い出した。
つまり、いわゆる師弟関係にも片想いが存在する現実を、再び目の当たりにしたわけだ。
普段のカカシ先生は、近寄りがたくて謎めいた、何を考えているのかよくわからない人だ。
そして、どんなに憧れて、もっと知りたい、傍にいたいって思っても、独り占めするわけにはいかない、三人で共有するべき人物だった。班のメンバーが減ったり入れ替わったりして、今のオレは、一番の直属の部下のような位置にいるけれど、前よりは近くにいるような感じはするけれど、それだけだ。別に変わったことは何もない。
それに比べて、以前から羨望してやまないゲジマユと激眉先生の関係は、中忍試験の最中とまったく変わりがなく、オレは今も二人のやりとりを指を咥えて見ているしかなかった。
あそこまでとは言わねーけどさ……。
もう少し仲良くなれたらなぁと思う。
でも、残念ながら、オレとカカシ先生がこれ以上親密になれるとは、到底思えねーんだってばよ。
オレの方から距離を縮めるには、一体どうしたらいいのか、皆目見当もつかない。
今の関係を変えてしまうのが怖いだけだって言えば、そうかもしれねぇ。
オレとカカシ先生の間には、距離がある。
オレがカカシ先生を独り占めしたかった時、先生の一番のお気に入りの教え子は、オレじゃなかった。
一番出来の良い子が一番良い扱いを受けるのは、実力主義の忍の世界ではとても正しいことのように思えて、とても悔しかったのを……今でもよく覚えている。
競い合う相手が不在のままでは、本当の一番の座を奪い取ることも出来ない。
もしかして、この状態がこれから先もずるずると続くんじゃねーか?っていう悪い予感に、最近のオレは困り果てている。
オレのカカシ先生に対する好きって気持ちは、ちょっと普通じゃない。
先生を独り占めして、先生の部屋に自由な出入りを許されて、何日もつきっきりで修業を見てもらって、二人きりで過ごして、そういうことをあの時期にサスケじゃなくてオレにしてもらいたかったと主張して、じゃあそれでどういう関係になりたいのかと問われれば、もうそれはむやみに言葉にしていいことじゃなかった。
ちょっと……いや、だいぶ、気持ち悪いかな? と自分でも思う。
十二歳のガキの頃に芽生えてしまっていた感情は、当時はあんまり自覚がなかったけれど、普通じゃない執着心や独占欲は今でも変わらずに、心の中にわだかまっている。