どういう「好き」なの? 16
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出っ張った腰骨から肋骨の辺りまでを、そろりと撫で上げる。
脇腹を震わせて感じながら、息継ぎも制限されて苦しいはずなのに、ナルトはカカシの唇を追い掛けて舌を伸ばしてくるのだった。
拙いが、懸命だ。カカシがすることなすことを赦し、誘っているのを強く感じる。
(そんなにオレが欲しいのか)
「……なぁ、ナルト、このまま……する?」
振りほどくように合わせていた唇を離し、カカシは堪らず問いかけた。ナルトは驚きに目を見開きながら、一も二もないように頷いて……一瞬遅れて色濃い羞恥を浮かべる。手の平に感じる心拍は動揺を如実に伝えてきた。
カカシを見上げる瞳に浮かんでいるのは、あからさまな興味と羨望と、……信頼だ。何故なら自由な方の左手はカカシの服を握り締め、離さないと言うように縋りついている。
そんなに嬉しそうにするな、とカカシは思った。歯止めが利かなくなる。
連れて来られたのは寝室だった。ベッドヘッドの出窓には、目覚まし時計、一対のフォトフレームと観葉植物、愛読書。
変わっていない。
鉢植えは、なんの変哲もない小さなパキラの木だった。午後の陽光を浴びて、気持ち良さそうに葉を広げている。元々、幹を切り詰められていたので、背は伸びないだろうと思っていたが、その分、枝葉が増えてつややかに茂り、元気そうだ。
ナルトがアカデミーに通っていた頃、半枯れになってゴミ収集場に捨てられていたのを見付け、可哀想に思って拾ったものだった。新しい鉢を用意して植え替え、生気を取り戻していく様子を観察するのが楽しくて、名前まで付けて可愛がっていた。
ナルトの部屋の窓際にあったその鉢は、下忍になって間もないある日、訪ねて来たカカシに持ち去られ、ここに移されてしまう。
カカシが何故わざわざそんなことをするのか、同時のナルトにはさっぱりわからなかった。
心配だ、様子を見に行く、と言って、この木のためにこの部屋を何回か訪れた。本当は丈夫な品種で、世話も簡単だから、わざわざ面倒を見に行かなくても平気だと分かっていたけれど、カカシはナルトが来るのを嫌がらなかった。
嫌がる訳が無い、と今なら分かる。
(……なんで通うの止めちゃったんだろ、オレ)
もちろん、試験以降はそれどころではなくなってしまった、というのも、あったけれど。
(すっげー損した気分だってばよ……)
片想いだと、ずっと思い込んでいた。
「なんて顔してる」
後ろから両腕が伸びてきた。抱き寄せられて、はっと我に返る。
「今度は何を考えてた?」
「あ、木が……」
「え?」
「ウッキー君はずっとここにあったんだな、って」
「……木って、お前、そっちなの?」
どうやらカカシは、ナルトが写真を見て立ち竦んでいると思っていたらしい。身体を返し見上げれば、目を瞬いて驚いている。また相手の予想の斜め上を行くことを口にしてしまったらしい。
自分もフレーム内に納まっているその写真を見るのは……今のナルトにとっては少々辛かった。カカシの肩口に額を軽く乗せる。
「オレ、こういうふうに、ここに連れて来てもらいたかった。もっとここに居たかった」
「なーに、ウッキー君が羨ましいわけ?」
頷く。
耳の横で溜息を吐くのが聞こえた。抱き締めてくる腕に、ぐっと力が籠る。
「もう何も遠慮しなくていいよ。我慢させて悪かった」
うん、ともう一度頷いて、片手でしがみついた。
そのまま、耳に唇で触れられる。