ヒミツのごちそう 5
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三度目の口づけを思い起こすナルトの表情を、カカシはつぶさに観察する。
甘苦しさを堪えるように唇を引き結んだかと思えば、どこか物憂げに息を吐き、口元を緩める。ベッドの上で抱え込んでいる身体をわずかに揺らし、膝をにじらせ腰を捩るその仕草、その表情を彼は注意深く見守った。
ナルトが何を思い起こしたのか、カカシには手に取るように分かる。本格的な口づけが鮮明に呼び起こす記憶、あの二晩で自分がしてしまったこと。この身体の内側深くへと鮮烈に刻み付けてしまった体験。
もし、ほんの少しでもカカシに対する困惑や恐れがあるなら、すぐに手を放そうと思ったが、そうはならなかった。
蕩けるような夢見るような貌を見せたかと思うと、ナルトは勢い良くしがみついてきた。
「へへへ、せーんせ」
「ナルト」
「カカシ先生、大好き!」
伸び上るようにナルトの方から頬を寄せ、口づけてくる。反動でカカシの身体は倒れ、ナルトに上から圧し掛かかられた。見上げれば、そこには嬉しくてたまらないというように悪戯っぽく目を細めるナルトがいる。
「オレの先生だ」
無邪気に弾けるその笑顔。カカシは目を釘付けにする。部屋の明かりが逆光になって色素の薄い髪が透けて煌めいていた。
なんて眩しい。目を細める。この里に春が来るのはもう少し先かもしれないが、今降り注ぐのは、カカシだけの春の陽の光のように柔らかく優しい輝きだ。
手を伸ばし、改めてナルトを捕まえ体勢を反転させた。腕の中に閉じ込めたナルトは無心に見上げてくる。
「顔、もっとよく見せて。オレだけのナルト」
「ん」
髪を指で梳く。頬を掌で包むように撫でる。人差し指の腹でぷっくりと膨らんだ唇の柔らかさをなぞる。元気良く跳ね回るあの存在は、この腕の中へと招き入れれば容易にカカシだけのものになる。
愛しくてたまらない。互いの視線が絡めば、まるで合わせ鏡の無限回廊に入ったような錯覚に襲われた。二人だけでその静謐へと迷い込む。
互いに吸い寄せられるように口づけていた。
閉じられることなく初めから半開きで誘い掛けるそこへ、カカシはするりと入り込む。
未だ拙い動きにもかかわらず、待ち構えていたように纏わり付かれた。
この積極性。相変わらずだ。こちらは歯茎の裏側や舌の付け根や敏感な上顎を、細やかに可愛がってやりたいのに、必死になって吸い付き、不慣れながらも絡めてくる。唇の合わせ目を傾けて加減したくてもままならない。ちゃんと呼吸できているのだろうか、心配になって振り解き離れてみれば、泣きそうな顔をしてこちらを見上げる。
(こいつ、なんて顔をするんだ)
途中で止めてやるつもりなどさらさらないのに、何を不安になっているのか。堪らない気持ちになって再び唇を重ねた。手加減なしに深く入り込み、息まで奪うように喉奥まで容赦なくなめまわしてやれば、力尽くで窘められたのが余程効いたのか、ナルトはおとなしくなった。
深く、浅く、キスを続けながら今度は服に手を掛ける。上着もズボンもジッパーを下ろして脱がせるのは、相手がまったく嫌がらず多分に協力的なお陰でとても楽だった。暖房が効きはじめた部屋の中、己の服を脱ぎ捨てるのも時間が掛からない。
ナルトは久し振りに目にしたカカシの素肌にしがみついてくる。懸命に首へと腕を回され、
「せーんせ」
「何よ」
そんなふうにしがみつかれてしまうと、自分が相手の裸を眺められないのだが、まぁそれでもいいか、とカカシは思った。ナルトの白い肌とまだ華奢な筋骨は目の保養にもなるが、カカシにとっては余りにも扇情的過ぎて目の毒でもある。