オールウェイズ 1

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 その日、ナルトは人伝で綱手からの指令を受け取った。
 鉄の国から帰って来たばかりだ。里の雰囲気は慌しい。再建作業の進行は勿論、五代目の復帰と共に様々な内外任務が再開されたようだった。
 が、ナルトは何をする気にもなれなかった。
 鉄の国の国境で起こったこと。帰国後、すぐに同期の皆と気の重い話し合いをしたこと。妙木山で受け取った封印の鍵とお告げとのこと。
 鬱々と想いを馳せ、眠りに就いたのは昨晩のことだった。
 すっかり休みだと思い込み、ゆっくりと起き出して外へ出て、建て替えられたばかりの保養所まで行って温泉に入り、遅過ぎる朝飯兼昼飯を外食で済ませたところを見付かった。
 ナルトを探していたのは、古書所の文書係だった。
 連れて行かれた先は、新しい火影邸の近くに建てられた蔵で、そこには何故か、先に来ていた木ノ葉丸の姿があった。新しい本棚などの什器類や、新品の敷き物が積まれた向こう側に、瓦礫の下から掘り出されたのものだろうか、埃っぽい書物や古い道具類が幾山も堆く積まれている。
 二人でこれを整理しろ、というのが五代目の命令だった。



「じじいの荷物か!」
 一目見て、木ノ葉丸にはぴんと来るものがあったらしい。驚いたように声を張り上げた。
「……結構無事に残ってるんだなコレ」
 綱手が火影公邸に住むようになってからも、彼女は師が使っていた調度類の配置を大幅に変えることはなかった。
 やがて、業務量の増加に伴って新しい物はどんどん増え、シズネの整理整頓の手が入るようになり、三代目の蔵書や身の回りの品々は徐々に、階下の空いている部屋へと移されていったはずだ。
 そんな物置部屋が幾つかあった。記録班が引き取らないような機密性の低い書類や、使われなくなった古い道具、難解そうな大小の巻物の数々が詰め込まれていた様子を、ナルトは思い出す。
 建物は完全に崩れてしまったが、崖下に吹き寄せられた瓦礫の中から、こんなにたくさん無事な物が見つかったのだ。
 皆で力を合わせて掘り出し、ある程度は分類され、或いは適当に積み上げてあるようだ。急いで修復、整理しなければならないものをより分けて、その残りだろう。



 呆然と立ち尽くすナルトと木ノ葉丸に、文書係の男は一枚のリストを渡した。もしこの中に混じっているようなら古書所が引き取りたい書類の一覧だった。見つからなくても構わない、と言う。片付け自体も、絶対今日中に終わらせなければいけない、という類のものではない。
 休憩を取りながら適当に、と言い置いて、彼は去って行った。



 歴代の火影たちの遺品だ。
 確かに、誰でも気兼ねなく触ってもいい、という扱いの物ではない。
 しかし急ぎの仕事でもない。
 ようするに、手の空いている身内に片付けさせろ、ということらしい。
 改めて目の前に積み上げられた荷を見て、ナルトは静かに衝撃を受けていた。木ノ葉丸が取り掛かった山は、三代目の私物。その向こう側の、見るからに年代物ばかりが少量、ひとまとめにされているのは、五代目の祖父とその弟のものだろう。
 つまり、ナルトの目の前に積まれているこれは、四代目の遺品だ。
 あの物置部屋に置かれていた書物や品々を、そういう目で意識して見たことが、ナルトは今まで無かった。今日が初めてだ。
 この自分が、身内の遺品の片付け……すごく不思議な感じがする。
 そもそも身内がいたことすら、つい最近まで知らなかった。何度でも驚ける、と、未だに思う。









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