オールウェイズ 4

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 この荷物の中のどこかに、写真は残っていないだろうか。いつか時間が出来たら、全部ひっくり返してみよう。
 それこそ、好きな食べ物を食事の最後に取っておくように、自分だけのとっておきの時間を過ごすために。
 いつか。
 もう一度、涙をぬぐった。
 我に返って、少し離れた向こう側にいる木ノ葉丸の様子をそっと伺ってみると、やはりぐずぐずと泣きながら作業していた。
 彼が片付けなければならない量は、ナルトの受け持ちの軽く三倍はある。手伝うべきか、とも思ったが、そういう空気ではなさそうだ。お互い泣いている姿を見られるのは、何となく気まずい感じがする。
 ナルトは見なかった振りをして、作業に戻った。



 そんな調子なので、片付けは遅々として進まなかったが、別に無理して進める必要もないに違いない。
 命じた綱手だって、進捗の期待なんかこれっぽっちもしていないはずだ。
 彼女にとって重要なことは、おそらく「ナルトに四代目の遺品の片づけを命じる」ことそのものであって、それを周囲の人たちが何でもないことのように受け入れることであり、ここに来たナルトにこうやって色々なこと考え事をさせるのが目的なのだろう。
 何時間経ったか。
 取り敢えず、それらしい位置に整え終えて、ナルトはほっと一息をついた。
 変な顔をした蛙の置き物と、ラベルが茶色くなったインクの瓶を、床に座った目の高さの棚板に乗せる。
 そう、こんな感じ。確かこんな感じで置いてあった。
 達成感に両拳を上げて、そのままごろりと床に転がる。書架と書架の間。収まりきらない巻物や四つ目綴じ本が、所狭しと並ぶ狭い空間に、ナルトは新しい絨毯を重ねて広げ、そこを新しい自分の場所に決めた。
 懐かしい雰囲気が漂っている。ここにいれば、ナルトを避け、遠巻きに冷たい目で見る大人たちは、誰も入ってこなかった。常に、ナルトを護る雰囲気が漂っていた。
 自分は守られていたんだ。こんなに。
 改めて思う。
 寂しくて、辛くて、悲しいことがたくさんあったし、理不尽な扱いばかり受けて、たくさんの不満を抱えていた、と。感じていた時期もあったけれど。
 いいことだって、いっぱいあった。
 充分じゃないか。
(オレは今、こんなに幸せな気分だ)
 却って、こんなに良いことずくめで本当にいいのか、とさえ思う。



 手にしていた物を次々と失っていくばかりのサスケと、何もないと思っていたところから、どんどん手に入れて、取り戻していく自分。
 その差異と隔たりを想って、ナルトは静かに瞑目した。









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