オールウェイズ 12

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 何となく歯切れが悪いと思ったら、そういうことか。
(しばらく、別行動)
 ナルトは大人しく腕の中に収まったまま、続きに耳を傾ける。
「お前は少し特殊な部隊に配属されて、極秘の任務に着く。そっちにはヤマトが行くことになっている」
「……そうなんだ」
「明日にでも正式な召集があるはずだ」
「わかった」
 頷き、しかし、すぐにはっとした。
「明日?」
「ああ」
「うそ、そのまま出発かなぁ……」
「分からないけど、可能性は高そうだな」
「じゃ、一緒にいられんの今夜だけ?」
「そうなるね」
「……そっか……」
 今夜だけ。その事実が思わぬ強さでナルトの胸に突き刺さる。
 そう言われたら、大人しく受け入れるしかない。嫌だと思ってもすぐには口に出さないやり方を、ナルトは身につけつつあった。
 肩に巻き付いている手に、頬を乗せ掛ける。
 今後、この人たちの指示なんて聞いていられないと思うことは、もっと出てくるだろう。いずれ、己の判断だけで間違わずに選択していかなければならなくなる。そんな局面はきっと次から次へと増えていく。
 だから聞ける時は出来るだけ聞いておく……というわけではないが、最近の自分はめっきりそんな感じだ。
 しかし、頭の中と感情は別だった。
 二人きりでいられる部屋へ連れてこられて、これからここでゆっくりと過ごせるのだと、昂揚していた気持ちが。もしかしたら、今まで出来なかった話をたくさんしてもらえるかもしれない、という期待に膨らんでいた心が。
 その時間が、あまりにも短く限られていることを知って、ショックを受けている。
 ずっと一緒にいたいと思った瞬間に、別行動を言い渡されるのは、こんなにも辛い。胸の内が鋭く抉られるように痛んで、苦しい。何も声にならない。
 ぐっと堪えて息を止め、強く目を閉じた。それだけで精一杯だった。



 極秘任務なんて単語をちらつかせたら瞳を輝かせて内容を知りたがり、機嫌の良い笑顔を見せてくれるのがいつものナルトだ。
 別行動だって、珍しいことじゃない。わざわざ抱き寄せて告げるような内容ではなかった。普段の自分だったら、もっと上手く頃合いを見計らって、違う態度で切り出したに違いない。
 カカシは申し訳なく思う気持ちに打ちのめされている。出発は明日かと聞かれて、分からないと答えたが、それも嘘だった。本当は、スケジュールは完全に決まっている。明日の昼前には誰かが……おそらくアオバになるだろう、火影の使いとして迎えに来る手筈になっていた。
 またナルトを人に預けるのか、と思うと切なくなる。何度目だ。イルカから取り返し、エビスに依頼し、自来也に連れて行かれ、ヤマトに代役を任せ、妙木山に送り出し。
 六度目か。
 ナルトには話せないが、今回彼に来た話はまさしくそういう話だった。
 しかも今度の預け先は、今までのような身内ではない。完全な余所様だ。
 木ノ葉の里には伝わっていない、だがナルトには絶対に必要なノウハウを学ぶことになる。
 同じ人柱力に直接教えを請う機会なんて、同盟が成らなければ有り得なかった話だ。この千載一遇のチャンスを逃す手はない。
 隠し場所としても最高の環境という話だ。大人しく匿われてくれるようなナルトではないだろうけど、それはそれ、随行する上忍たちも選り抜きだ。申し分ない。









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