ヒミツのごちそうおかわり 5

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 思わぬ展開に、ナルトは急激に体温が上がるのを自覚した。嬉しくてどぎまぎする。
 顔を隠していない、完全オフモードなカカシとこんなふうに急に二人きりになれるなんて、不意打ちもいいところだ。何日ぶりだろう。絶対顔が赤くなっていると思う。
 束の間、そんなナルトの反応を楽しんだカカシは、優しく話題を逸らした。
「手紙、進んでるか?」
「お、おう! あ、そだ、カカシ先生はエロ仙……じゃなかった、自来也師匠に何か言いたいことある?」
「そんなの決まってるでしょー。知ってるくせに」
「にししっ、原稿の進み具合聞いとくってばよ」
「一番熱心な読者が熱烈に続きを待ってますって、書いといてね」
「へいへい……って、もっと大事な連絡とかねーのかよ!」
「ないねー」
「あんなワケわかんねー本、何がおもしれーんだか」
「でも、書いてあることは前より理解できるようになっただろ」
 傍らでラグに寝そべったカカシを、ナルトは掴んだクッションでぼふんと叩いた。
「そういうこと、言うなってば」
「叩くことないでしょー」
「うっせー、もう眠ってていいってばよ。書き終わんねーじゃねーか」
「書き終わったら相手してね、ナルト」
「……」
「クシナさんとの修行のことは書いたの」
「……それば、これから」
 カカシはむくりと起き上がる。
「昨日、どうだった」
「父ちゃんや母ちゃんから聞いたんだろ」
 昨日は両親が修行を見てくれた。そのあらましは既にカカシに伝わっているだろう。
「でもお前の口からも聞きたいよ」
「どうにもなってねーってば」
 ナルトは筆を握り、巻物に向かったまま俯いて唇を噛む。
「オレが挑戦しようとしてることは、父ちゃんも母ちゃんもやったことねーことだ。教わるだけじゃなくって、自分で考えてやんなきゃいけねーって、わかってる」
 母が渦潮の里から持ち込み、父親が発展させた、木ノ葉の里に伝わる封印術とは大きく異なる術。習った部分は扱える。だが、この腹の封印の開閉が自在に出来るようになったとしても、すぐにどうにかなるような簡単な問題ではない。
 ただ力を封じるだけではなく、使いこなせるようになるのが最終目標だ。でも、どうやって。
「オレはできるって思うんだ」
 何の根拠もない自信ならある。直感で糸口は見つかっている。今は意思の疎通をはかりたくても相手にされない状態だ。ナルトを脅し嘲うだけの九尾。まだ何も成し遂げていないナルトを決して認めようとしない九尾。
 悔しい。そしてその大きな気配が発する苛立ちに脅かされる。里の人々の何割かが未だ怯え嫌悪するように、この巨大な力が暴走してしまったら一体。
「オレはお前が考えてることをそのまま書いていいと思うよ」
「そう、かな」
「国内外に広い見識を持たれている方だ。何かヒントになることを返事に書いてくれるかもしれないし、帰って来るきっかけになるかもしれない」
「じゃあ書いてみる」
「うん」
 が、言うほど楽な作業ではなさそうだ。
「……。……どうやってまとめればいいんだってばよ……」
「そこは自力で頑張れ」
「えええ」









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